東恩納裕一展
2023年11月25日(土)-12月23日(土)
水曜-金曜 12:00–19:00 土曜 12:00–17:00
火曜 by Appointment only
展覧会は2Fと4F(若狭ビル)で開催
11–12月は東恩納裕一展を開催致します。
2019年に開催した二人展「重なりと作用」以来、個展としては初めてとなります。
日常なありふれたもの、特に、戦後日本のどこの家庭にもあった「ファンシー」なインテリアをモチーフに絵画やオブジェを制作。それら「ファンシー」なものは、西欧へのねじれた憧れが生み出したオリジナル不在の「不気味なもの
」と言えるかもしれません。代表作の日本独特の丸型の蛍光灯が多数絡むシャンデリアは白く過剰な光を発し、全てを暴いてしまうような激しい存在感を湛えています。
今回もさまざまなメディウムが盛り込まれたインスタレーションとなり、2Fと4Fの2フロアを使った初の試みとなります。美術評論家の清水穣さんとの対談も開催致します。
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関連イベント|対談
清水 穣(美術評論家、同志社大学教授)+東恩納裕一
日 時|12月9日(土)18:00–19:30
参加費|1,000円
会 場|The Third Gallery Aya(10名)+YouTube配信
申込先|こちら 06-6445-3557
*お申し込み後に詳細をご案内いたします
*ギャラリーを会場に配信いたします
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東恩納裕一を紹介する
1980年代から90年代にかけて国際的デビューを果たした日本人アーティストとは異なり、東恩納裕一は、象徴的な決まり切ったイメージ −ヒノマル、ヒロヒト、ヒロシマ(PC日本人の3H)− を一切使わない点が新鮮であった。彼はむしろ日本社会の見えない、目立たない形相に目を向けた。戦後日本の中流階級は、自分たちがヨーロッパのスタイルを輸入したと思い込んでいた、しかし、「ファンシー・グッズ」というキャッチーな名前で呼ばれた、建売り住宅の出窓のレースのカーテン、プラスティックの造花、パステルカラーの生活用品などは、ヨーロッパ式でもファンシーでもなく、日本にしか存在しない。つまり、「ファンシー」はオリジナルのコピーではなく、オリジナル不在のシミュラークルに他ならない。「ファンシー・グッズ」こそ、日本における現実の見えざる構造を映し出していた。[…]
明からさまに政治的なアートとは実際の政治を単純化したものである。リアルな政治とは、目に見えない細かな権力関係のネットワークを通して機能し、そのネットワークが順調に機能していることを誰も意識していない時が、政治的には理想の状態ということだ。[…] 本質的に政治的なアートとは、市民権を得ているが自覚されることのない政治を扱い、隠されているものを露わにする。東恩納は、日本社会の暗黙の政治に焦点を当て、親近感があってなおかつ違和感のある(=「不気味」な)シミュラークルの正体を暴き、その日々の機能に介入してきたのである。
[…]
近年の東恩納の関心は、日本的なテーマからより普遍的なものへと移り、和製シミュラークルという狭い範囲を越えて、視覚的な効果の文化的な役割を深く探求している。この新たなステージにおいて、暗黙の政治性が従来とは異なる革新的なオプ・アートを見出しているのである。[…] 一見自然だと思える環境は、何らかの政治性や制度を潜ませているものとして見なされる。あるひとつの性質(例えば白さ)を過剰化することで、そこに潜むものを顕在化させる。東恩納がホワイトキューブに足を踏み入れるのは、そこにひずみを生じさせるためである。この誇張化、介入とひずみが、新たなオプ・アートを構成する。そこでは不気味なものと芸術的な美とがユーモラスなバランスを保っているのである。
清水 穣「白と黒の揺らぎ:東恩納裕一の『ライト・ワークス』」
(『FL gasbook 26』2012年)より抜粋)
東恩納 裕一
ステートメント
カタカナ表記では“室内”しか意味しないインテリア(interior)の第一義的な意味が“内面/内部”だとすれば、かつて日本の多くの家庭の室内がファンシーな品々で満たされていたのは、そこが戦後世代の、そして日本の内面でもあったからではないでしょうか。 西欧文化への憧れが生み出したファンシーな品々は、わたしにとって馴染みがありながら好きにはなれない疎遠なものであり、それは、フロイトの「不気味なもの/unheimlich」*1の定義にぴったりと符合するものでした。 ただ、 “不気味さ“の現れが何かの症候だとして、それを感じる個別の感覚が他者と共有されるのか、普遍性を持つのか・・という疑問がつきまといます。 21世紀初め、初めて多数の蛍光管による“シャンデリア”を制作した際、当初素朴な風刺・パロディー*2を企図したにもかかわらず、煌々と白い光を放つ蛍光灯シャンデリアにアイロニーとは無縁の過剰さ、痛快なカタルシスを感じたこと、そこに1つのヒントがあるかもしれません。つまり、日本的なものから日本的でないものへ、個別的なものから普遍的なものへ、そして「不気味なもの/unheimlich」から「不気味でないもの/un-unheimlich」*3へ、という転回・・・。 *1『不気味なもの/ Das Unheimliche』ジグムント・フロイト 1919年 *2日本が偏愛する蛍光灯、特に日本の家庭で独自に普及した丸型蛍光灯を多数使用し、西欧文化のアイコンともいえるシャンデリアに擬態する。 *3「不気味でないもの/un-unheimlich」は、unheimlichに否定の接頭辞;un- を加えて二重否定する、千葉雅也氏による造語。『意味のない無意味』河出書房新社 千葉雅也 2018年 |
経歴
東京都生まれ、在住 |
主な個展
2023 | 「awkward assemblages」CALM & PUNK GALLERY、東京 |
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2020 | 「Large Interior」void+、東京 「Ota Art Archives(OAA) #2 東恩納裕一」KOCA、東京 |
2019 | 「un-」Capsule 、東京 「un-unheimlich/不気味でないモノ」void+、東京 |
2017 | 「blank -prints and drawings-」日本橋高島屋 Gallery X、東京 |
2016 | 「Spill Light」 Yumiko Chiba Associates viewing room shinjuku、東京 |
2015 | 「Play double」 CAPSULE、東京 「let’s get dizzy」Marianne Boesky Gallery 、ニューヨーク |
2014 | 「bascule」CAPSULE/SUNDAY、東京 「Ubiq」Yumiko Chiba Associates viewing room shinjuku、東京 |
2012 | 「Apparition」Yumiko Chiba Associates viewing room shinjuku、東京 「東恩納裕一/FL」 CALM&PUNK GALLERY/NADiff GALLERY、東京 |
2011 | 「fluorescent」Marianne Boesky gallery 、ニューヨーク |
2010 | Exit gallery 、香港 「VENICE/TOKYO」Venice Projects、ベニス yumiko chiba associates viewing room shinjuku、東京 「fluorescent/new prints&drawings」NADiff Gallery2F、東京 「ヴェネツィア/東京」べレンゴ・アカツ・コレクション、東京 |
2009 | 武蔵野美術大学80周年記念展「変成態-リアルな現代の物質性 Vol.4 東恩納裕一」ギャラリーαM、東京 |
2008 | Marianne Boesky gallery project space、ニューヨーク 「refract!」カームアンドパンクギャラリー、東京 |
2005 | 山本現代、東京 |
2003 | 世田谷美術館/廊下、東京 |
2001 | ギャラリー101、オタワ |
2000 | Nadiff、東京 |
主なグループ展
2023 | 「植物と光、依存と自由Ver.1」void+、東京 |
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2022 | 「桃源郷通行許可証」埼玉県立近代美術館、埼玉 「Positionalities」京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA、京都 「世界の涯ての庭と室内。」(滝戸ドリタとの2人展)AL|TRAUMARIS、東京 |
2019 | 「重なりと作用」(神山靖弘との2人展)The Third Gallery Aya、大阪 |
2015 | 「GLASSTRESS 2015 GOTIKA」Berengo Studio 、ベネチア 「六本木アートナイト2015」政策研究大学院大学 、東京 |
2013 | 「アートがあれば II ─ 9人のコレクターによる個人コレクションの場合」東京オペラシティアートギャラリー、東京 「2Junkies’ Promises: Curated by Iván Navarro」PAUL KASMIN GALLERY、ニューヨーク |
2012 | 「代官山アートストリート」旧山手通り周辺施設、東京 |
2011 | 「THE MARGULIES COLLECTION AT THE WAREhOUSE」 THE MARGULIES COLLECTION AT THE WAREhOUSE、マイアミ 「MASKED PORTRAIT PART II When Vibrations Become Forms」 Marianne Boesky Gallery、ニューヨーク 「Glasstress 2011」 Palazzo Cavalli-Franchetti、ヴェネツィア |
2010 | 「The New Décor」 Hayward Gallery、ロンドン |
2009 | 「SECOND NATURE EN DANSK-JAPANSK DESIGNUDSTILLING」 RUNDETAARN、コペンハーゲン 「インシデンタル・アフェアーズ うつろいゆく日常性の美学」 サントリーミュージアム、大阪 「Constructivismes」アルミン・レッシュギャラリー、ブリュッセル |
2008 | 「ダブルクロノス」ZAP、東京 「The Masked Portrait」 Marianne Boesky Gallery、ニューヨーク |
2007 | 「六本木クロッシング 2007 未来への脈動」森美術館、東京 「THIS PLAY!」21_21 DESIGN SIGHT、東京 |
2006 | 「Sea Art Festival (Living Furniture)」2006釜山ビエンナーレ、釜山 「愉しき家 Enjoyable House」愛知県美術館、名古屋 |
2004 | 「Officina Asia」ボローニャ近代美術館、ボローニャ |
2003 | 「ZONE」府中市美術館、東京 |
1999 | 「時代の体温 Art / Domestic」世田谷美術館、東京 |
出版
2012 | 『GAS BOOK 26 FL』ガスアズインターフェイス株式会社 |
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2009 | 『Yuichi Higashionna Flowers』(テキスト:中山真理)トゥルーリング株式会社 |
2008 | 『GAS BOOK 25 YUICHI HIGASHIONNA』ガスアズインターフェイス株式会社 |