APPEARANCE

兼子 裕代

2020年1月25日(土)-2月22日(土)
火曜-金曜 12:00–19:00/土曜 12:00–17:00

2020年最初の展覧会は、兼子裕代の個展を開催致します。
2010年から歌を歌う人々を撮影したシリーズ「APPEARANCE」を続けてきました。その一つの集大成として写真集にまとめ展覧会を開催致します。
歌うことで無防備になった表情や身振りだけでなく、世界と共鳴する瞬間が立ち現れる時にシャッターを押されたイメージには、
被写体たちが本来もつその外形を捉えた「出現の空間/APPEARANCE」が留められています。

January Party
2020年1月25日[土]17:00–19:00
若狭ビル全体と山登寿ビルでの5軒のギャラリーによる合同パーティーを開催致します。是非お越しください。

トークイベント|
小林美香(写真研究者)+ 兼子裕代 

日 時|1月25日(土)15:00–16:30
参加費|1,000円(1ドリンク付き・税込)
定 員|25人(要予約)
申込先|tamaki@thethirdgalleryaya.com / 06-6445-3557
会 場|The Third Gallery Aya

この空間は、出現(アピアランス)の空間である。それは、私が他人の眼に現れる(アピアー)、他人が私の眼に現れる空間であり、人々が単に他の生物や無生物のように存在するのではなく、その外形(アピアランス)をはっきりと示す空間である。
--ハンナ・アーレント「人間の条件」

「APPERARANCE」は、歌う人のポートレート・シリーズである。

撮影を始める前の2009年夏から秋にかけて、私は原因不明の脳症で体調が不安定だったせいか、たびたび子どもの姿に目を奪われていた。子供のエネルギーに憧れを抱いたのと同時に、その危なっかしさや脆弱さに共感を覚えたのだと思う。そんな時、友人の音楽家が子供に歌を教えていると聞き、「歌う子ども」を撮影したいと思ったのがきっかけだ。

数年後、あるギャラリーで、歌を歌っている青年を見かけた。伴奏もなく、ただベンチに座って歌うその姿は、無防備でありながら、なんとも厳かな雰囲気をまとって周りの人々を魅了していた。その時、大人も子供も関係なく歌う人には共通する何かがあると感じ、「歌う大人」を撮るようになった。

歌いながら人は感情を表現する。メロディは「過去」や「未来」への想いを喚起し、リズムは身体を刺激し、様々な表情と身振りが被写体の上に現れ消えていく。写真は感情という目に見えないものを写すことはできないが、常に変化する表情の一瞬を捉える。その特質を利用して、被写体の顔に不意に現れる、感情の発露の瞬間を捉えたいと思った。

矛盾するようだが、制作過程で、フィルム・フォーマットを正方形から長方形へと変更し、被写体の周辺をより取り入れるようになった。顔だけを切り取りたいなら背景は邪魔なはずなのに、それを排除する方向に向かわなかったのは、この撮影において被写体が現れる空間に何かしらの意味を感じていたからだ。

2002年にアメリカに移住してから、アピアランスがはじまる2010年までの間、私はこの地でなかなか写真が撮れなかった。それは、カメラを被写体に向ける時に生じる、「なぜ私はここでこれ(この人)を撮るのか」という問いにうまく答えられなかったからである。外国人の私が異国で写真を撮るには、超えなければいけないハードルがあるように感じていた。しかし、「歌う子ども」を撮りたいと思ったとき、私の中で、ここが外国とか私が外国人とかいうことはどうでもいいことになった。子どもという存在も歌うという行為も普遍的なものだと思った。そして子どもの延長にある大人も人間として普遍ではないかと。すると、そこがどこであろうとも、私がだれかに出会い、話し、撮影するということが可能になった。

被写体のほとんどは、私が暮らすサンフランシスコやオークランド周辺で出会った人々である。友人の紹介、アパートの隣人、職場やボランティア先、展覧会や友人宅の集まりなど、日常生活の中で知り合い、撮影をお願いし、彼らの自宅や指定場所に出向く。歌の選択は本人に任せ、私は、彼らがそこに存在し、歌を歌い、世界を享受する瞬間を写真に留めたい一心でシャッターを押す。こうしてできた写真を一枚一枚紡いで、いつか写真集を作りたいと願った。一人一人独特な形で私の眼に現れた被写体たちが、また違う誰かの眼に現れ、その姿をはっきりと示す「出現の空間」を創り出すために。

*ハンナアーレント『人間の条件』志水速雄訳、筑摩書房、1994年、320頁

兼子 裕代

経歴

青森県生まれ
現在カリフォルニア州オークランド在住

明治学院大学文学部フランス文学科卒業後、会社員を経てイギリス・ロンドンで写真を学ぶ
1998年より写真家、ライターとして活動
2003 サンフランシスコ・アート・インスティチュート大学院に留学

受賞歴

2017 21回Photographic Center North West賞
2012 Philadelphia Museum of Art Photography Portfolio賞
2009 サンタフェ写真賞

個展

2020 「APPEARANCE」The Third Gallery Aya:大阪
2019 「Garden Project」Social Art Lab.九州大学:福岡
「Garden Project」Gallery Mestalla:東京
2018 「APPEARANCE」空蓮房:東京
2017 「APPEARANCE-歌う人」銀座ニコンサロン/東京、大阪ニコンサロン
2013 「Comes to the Light」 アートギャラリー石:東京
2012 「Steam & Ice」Red Poppy Art Center:サンフランシスコ
「Unfolding Lives In Tohoku」Rayko Photo Center:サンフランシスコ
2009 「Selections from Three Series 」Togonon Gallery:サンフランシスコ
「Nagasaki Dialog」長崎市図書館:長崎
「Sentimental Education」MIAD Perspective Gallery, Milwaukee Institute of Art and Design :ミルウォーキー
「Nature/Nurture, Two persons show with Betsy Weis」Rayko Photo Center:サンフランシスコ
2008 「Each Sun, Togonon Gallery:サンフランシスコ
2006 The Three Cornered World」Japan Information Center(在サンフランシスコ日本国総領事館):サンフランシスコ
2004 「fountains」Diego Rivera Gallery:サンフランシスコ
2002 「Nagasaki Dialog」Photographers’s Gallery:東京
2001 「Bushes and Palace」Gallery La Camera:東京
「Bushes and Palace」日本外国特派員協会:東京

主なグループ展

2019 「Ancestral Journeys」Euphrat Museum of Art, De Anza College:クバチーノ
2018 「Feast for the Eyes: The Story of Food in Photography Curated by Susan Bright and Denise Wolff」Louisiana Museum of Art and Science:ルイジアナ
2017 「THERE IS NO ALAS WHERE I LIVE」Jenkins Johnson Gallery:サンフランシスコ
「21st Juried Photography Exhibition」Photographic Center Northwest:シアトル
2016 「Zones of Representation」SF Camerawork:サンフランシスコ
2015 「Voices」Kala Art Institute:バークレー
「Heat」SF Camerawork:サンフランシスコ
「3@6×6, face/people/action」PHOTO:オークランド
2014 「Local Treasures: Bay Area Photography」Berkeley Art Center:バークレー
2013 「Nature as Muse」Murray Circle at Cavallo Point:サウサリート
2011 「Fukushima – Opening Doors with Compassion」Lutherkirche:ケルン
「LOST WORLDS > < MAKING WORLDS」Murata & Friends:ベルリン
2010 「THINGS ARE EXPANDING」Swarm Gallery:オークランド
2009 「Photography Now: China, Japan, Korea」サンフランシスコ近代美術館:サンフランシスコ
2008 「EIGHTEEN MONTHS: TAKING THE PULSE OF BAY AREA PHOTOGRAPHY」San Francisco Art Commission Gallery:サンフランシスコ
2007 「Elusive Subjects; James Welling, Sanna Kannisto, Jun Shiraoka, Hiroyo Kaneko」Togonon Gallery:サンフランシスコ
「Small Ambitions; A Perspective」Togonon Gallery:サンフランシスコ
「 Close Calls 2007」Headlands Center for the Arts:サンフランシスコ
2005 「Conversation With The Wall」Root Division Artists Spac:サンフランシスコ
2004 「image, object, back, forth」Diego Rivera Gallery (San Francisco Art Institute):サンフランシスコ
2002 「写真の現在2:サイト―場所と光景」東京国立近代美術館:東京

出版

2019 『APPEARANCE』青幻舎

パブリックコレクション

サンフランシスコ近代美術館
フィラデルフィア美術館
東京国立近代美術館
PAGETOP
SNS Twitter / Facebook / Instagram